8月5日に発行したFAX通信中の
「介護保険制度の基本から議論しよう!」
〜正村公宏氏の提言をどう受け止めるか〜
上記内容について市民協理事岡本健次郎さんより激励の言葉がありました。以下に全文を掲載いたします。
田中尚輝様
8月5日付FAX通信で、久しぶりに田中尚輝さんらしい論説を見ました。エース健在ですね。
正村さんの本は、まだ読んでおりませんが、新自由主義経済は、世界を席巻して我こそ正義のごとく振る舞っています。一方で、ワーキングプアーと国民年金以下の(つまり生活保護以下の)高齢者世帯が、激増している模様です。
介護保険を本来の地域自主運営、コミュニティによる市民互助を支えるものとして工夫していくことが望まれると思います。
田中さんの「介護保険の基本から議論しよう」の、呼びかけに賛意を表します。
実践的な動きになることを期待しています。
8月15日 岡本健次郎
FAX通信8/5号より
介護保険制度の基本から議論しよう!
正村公宏氏の提言をどう受け止めるか
正村公宏氏は長い間専修大学の教授を勤められた方で単なる学者というよりも社会政策について理論面から積極的に発言された実践派の研究者です。氏は昨年『経済が社会を破壊する』(NTT出版)を出版されたが、その中で、介護保険制度について氏はつぎのようにいっています。
「高齢者介護の分野では、全国基準による画一的制度として介護保険が導入されたため、厚生労働省による官僚主義的統制が強められている。同時に、人間と人間の信頼関係を土台とする継続的なかかわりあいによって維持されなければならない社会福祉の事業がこまぎれのサービスの売買へと変質しており、商業主義が浸透しつつある。地域ごとの高齢者人口に対応する財源再配分を中央政府が保証し、事業展開については地方のさまざまな主体による創意ある活動を可能にする分権主義的運営を推進する必要がある。」
確かに介護保険制度は厚生労働省官僚の支配下にあり、国家統制が強め荒れています。ただ、それ以前の措置福祉制度からすれば、保険者である一般市民の声や要介護者の自己決定権の保障が制度的に組み入れられたことは事実です。ただし、実際には法律の理念のように展開されていません。
このことは、正村氏が指摘するように厚生労働省の支配下で自治体が動く構造に変化がないために、「全国一律」の押し付け、かつ、事業者ごとの細切れサービスシステムになっていることはその通りです。
氏がいうように自治体ごとの自由な介護設計が必要なのですが、そのためにはつぎのような取り組みが必要でしょう。
?介護保険法の抜本的な改正
?自治体の自主性・自立性の能力の急速な向上
?被保険者の制度依存性からの脱却
?NPOによるサービスの多様化と提供能力の飛躍的な発展
正村氏が指摘していることを忠実に実行していこうとすると以上4点には取り組まなければならなくなります。この4月からの介護保険制度の「改悪」によって、この制度の問題点が浮上しており、氏の提起は、私たち介護保険に携わるものは真剣に議論をしていかなければならないのではないでしょうか。(田中尚輝)
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