改定介護報酬単価について議論続出!!
2月21日〜22日の2日間にわたり東京港区虎ノ門の日本財団ビルで市民協主催の『第8回トップマネジメントセミナー』が100名を超える熱心な方達の参加を得て開催されました。
冒頭、米山市民協代表理事が開会にあたり今回の介護保険制度改定を機にNPO法人の基本的なスタンスである「たすけあい活動」を見直しすることと事業の再構築という困難な局面になっている。そのために今回のセミナーが一つの指針になればという主旨の挨拶をおこないました。引き続き中島事務局長の司会進行により、以下のような主題の講演が2日間にわたりおこなわれ、利用者の負担増や事業者としても報酬単価に不満をもちとまどいも多く見られ利用者様の個別性の対応がこの制度では貫けない等々の意見も出され議論が続出しました。
(1)改定介護保険制度の今後
厚生労働省労健局振興課中野孝浩課長補佐
以下参加者との質疑応答の詳細です。
<Q・1>
ケアカンファレンスの実施にかかる費用に加算が無いのは?
<A・1>
ケアマネージャーの報酬全体からの観点で判断して欲しい。
<Q・2>
特定事業所の基準要件として介護度3〜5の利用者が60%以上になっている。介護度が低くても介護困難者(例:認知症で独居の方)が対象にならない。これでは特定事業所の認定を得るにはそのような利用者を受け入れられないが?
<A・2>
制度では60%の枠内に入れることは出来ないが、特定事業所の基準要件に介護困難者の積極的な受け入れを義務付けている。
<Q・3>
特定事業所の加算を得るため、中重度の利用者への契約偏重にならないか?
<A・3>
将来的な方向性として、地域内において利用者受入の役割分担を事業者間でおこなっていくべきである。
<Q・4>
今後制度の見直しは有るのか?
<A・4>
これがベストの制度であるとして施行するのであるから、現時点で有るとは言えない。但し、見直し規定があるので、施行後改善すべき点があれば是正する。
<Q・5>
介護予防通所介護・介護予防訪問介護の回数、時間の数値的な目安(ガイドライン)は出さないのか?
<A・5>
ケアプラン設定時に地域包括支援センターと打ち合わせて具体的サービスが決まるため一律には出来ないのでガイドラインは出さない。現在出されている数字を平均的な利用形態として考えている。
<Q・6>
グループホームの利用者の対象は?
<A・6>
要支援2〜要介護5(要支援1は対象外)
<Q・7>
小規模多機能型サービスで、開始後利用者が無い場合でも報酬は支払われるのか?
<A・7>
事業の内容については、制度的に地域の運営協議会でチェックされるので、運営に問題が無ければ利用者の有無には拘わらない。
<Q・8>
地域包括支援センターはケアプランを委託に頼っている(いわゆる丸投げ)これで本当に機能し、利用者の自立のための支援が出来るのか?
<A・8>
本来、従前のケアマネージャーは、介護給付のケアプラン等に専念するのが筋である。そのために改定後には受託して取り扱う予防給付プランの件数を8件までとしている。これは地域包括支援センターが自らプラニングを行うことを意味しており、事実その動きが活発化してきている。
<Q・9>
訪問介護に関連して、指定業者の加算は毎月の届出か?また、特定事業所の加算部分も利用者は1割負担するのか?
<A・9>
初回の届出で可。内容・条件に変更があった場合には届出る必要がある。利用料の1割負担はしてもらう(介護保険制度の規定内)・・・優秀な事業所でより良いサービスが受けられるという利用者への説明。
<Q・10>
処遇困難ケースの定義・条件はあるのか?また、特定事業所は引き受けを拒否できるのか?
<A・10>
一般論として、処遇困難ケースの定義・条件は無い。現状地域包括支援センターが判断する。今後事例の積み重ねからある程度の定義は可能。
特定事業所は積極的に受け入れることを加算要件として義務付けられているので、考え方として拒否は難しい。
<Q・11>
集中減算について、個人について対象になるのか?
<A・11>
1事業所のトータルが対象になるのであって、個人の部分を取り上げて対象にすることは無い。
<Q・12>
地域密着型サービスの指定で入居者の経過措置の有無と他市町村からの利用の可否は?
<A・12>
当面は経過措置が有る。また、地域密着型は区市町村の指定のため原則当該の住民の利用に限定されるが必要性を認められれば、複数の自治体の指定は受けられる。
<Q・13>
介護予防支援において、枠外(インフォーマルサービス)のプラニングへの報酬は?
<A・13>
ケアマネジメントの報酬は給付に結び付いたところに評価するというのが原則であるのでインフォーマルサービスには適用されない。
<Q・14>
小規模多機能型サービスにおいて介護支援専門員1名の配置が義務付けられているが、密室性が高いのではないか?一人一人のケアプランは個々のケアマネージャーが作成すべきではないか?
<A・14>
地域の関係する方々を含めて運営推進会議を設置し、ケアプランや利用状況をチェックする仕組みになっており密室性の懸念は払拭されている。
<Q・15>
難聴の利用者の方のように、中重度ではないが手のかかる利用者のケアマネジメントを受け入れていることへの配慮や住宅改修、福祉用具の相談等への評価が無いというところへの考え方は?さらにケアカンファレンスは必ず行わなければいけないのか?
<A・15>
先程の質問(Q・10)にも有ったが、制度として一律に困難者の判断は出来ない。ケアマネージャーへの評価は業務トータルで考慮して欲しい。今後の事例の集積により検討する課題となると思われる。
ケアカンファレンスというプロセスは原則必須である。
【市民協サイドとしての質問・確認】
Q-1・・・経過的要介護の対象者は?
A-1・・・現行制度の要支援者
Q-2・・・訪問介護サービスの特定加算における人材要件でサービス提供責任の全てが5年以上の経験を有する介護福祉士となっているがその経験とは何をさすか?
A-2・・・介護に関する経験をさす。
Q-3・・・集中減算(90%)とは事業別の実利用者数のことか?
A-3・・・通所サービス、訪問介護、福祉用具対応のそれぞれ位置付けられているケアプランの件数に対して一番トップの事業所の割合を算定し、それぞれ90%未満であることをみる。したがって件数ベースでみるということである。
Q-4・・・通所サービスの小規模、通常の基準で新規にサービスを開始する場合の算定は?
A-4・・・今後一定の基準値を提示し判断する。
Q-5・・・8名までの予防プランを超えた場合の対応は(ケアマネ1名、予防給付への見込み者25名)
A-5・・・出来れば事業者サイドから地域包括支援センターに相談願いたい。状況をみながら適切な情報選択を。
Q-6・・・各自治体への周知のスケジュールは?
A-6・・・2月21日より都道府県別にブロック会議を開き、政省令案を提示している。3月上旬〜中旬に官報に告示
Q-7・・・18年4月より新制度に移行しない自治体については?
A-7・・・経過的措置とする。
(2)健康年齢を持続するために(介護予防・地域推進の観点から)
川崎医療大学 長尾憲樹教授
教授は教鞭をとるかたわら、地域活動としてNPO法人「元気寿命を創造する会」を主宰している。生活習慣病や膝痛・腰痛の障がいを予防改善し、元気で活力のある暮らしを実現するため、個々人のライフスタイル、身体状況に応じた運動処方を提供し、継続的にその実践をサポートする健康指導を行っています。大げさな器具や用具を使わないで行うこの運動処方は個人個人のメニューに添った介護予防のための運動であり教授とそのスタッフの方達の思いと啓蒙活動により、徐々に自治体やマスコミ等を通じて広く知られるようになってきています。
今後、この介護予防に結びつく運動のカリキュラムが出来上がり全国農協中央会と協働して全国への展開がされようとしています。市民協としても大きな関わりのある運動であると認識し携わっていく予定です。
(3)より良いサービスの向上に向けて
城西国際大学 服部万里子教授
参加者との質疑応答です。
<Q・1>
認知症対応型施設への加算となる訪問看護士への報酬は施設に入るのか、直接本人に支払われるのか?
<A・1>
連携加算の支払先は施設となる。
<Q・2>
経過的要介護の方のケアプランは予防プランか介護プランか?
<A・2>
経過的要介護の方のケアプランは更新までは介護給付プランとなる。
<Q・3>
通所介護の事業所で特別な事情がありケアマネージャーが1人しかいない場合
でも90%減算となるのか?またその対象範囲は?
<A・3>
政省令による詳細がまだ出ていないので、不明な部分もあるが、事情によっては90%減算の適用外もありうる。また、減算の対象はそのケアマネージヤーが行っている全てのケアプランが対象となる。
<Q・4>
通所介護において口腔ケア等の選択的サービスを行う予定だが、それらのサービスについても各々アセスメントやモニタリングは必要なのか?またそのサービスによる加算には届出が必要なのか?
<A・4>
ケアプラン全体でのアセスメントが必要であること以外に、個々のサービスについてもアセスメントやモニタリングは必要である。また加算には届出が必要である。
<Q・5>
包括支払について、複数からの訪問介護を受けている利用者への割振りは?
<A・5>
具体的には、政省令がでないと不明であるが、何らかの形で割振られる事になる筈。
<Q・6>
グループホームのプラン作成業務を支援事業所に委託するとそのプランは委託された事業所のケアマネージャーのケアプラン数となるのか?
<A・6>
グループホームの中のプラン作成は居宅介護のプランとは関係ないので数には
含まれないが、プラン作成者は当該のグループホームの職員でなければならい(非常勤雇用契約で可)。
(4)パネルディスカッション
今後の事業所運営と展望
パネリスト:
福本佳子(NPO法人くらじたすけあいの会代表)
大西良太(NPO法人伊勢まごころ理事長)
神谷良子(NPO 法人神戸ライフケア協会副事務局長)
桑山和子(NPO法人ぬくもり福祉会たんぽぽ会長)
コーディネーター:
田中尚輝(NPO 法人市民福祉団体全国協議会専務理事)
以下参加者との質疑応答です。
<介護保険枠外の活動に関して>
※桑山会長
現状、介護保険の限度額を超えた方の部分が振られてきているが、その必要性を吟味して選択している(本当の意味でのたすけあいを考えている)具体的には、「子育て支援」「移送サービス」「たんぽぽの培ってきたノウハウの中から」
※ 神谷副事務局長
依頼に対しては、同様に必要性を吟味して選択している。たすけあい活動についてはトータルケアサービスという考え方の基にNPOセンターを設立し、地域の中でネットワークを組織し利用者一人一人に対するサービスをそのネットワークを使って運営していく構想がある。
※大西理事長
枠外サービスに対する考え方は他のパネラーと同様。別の観点から、地域の社協も枠外サービスを担うべきであると思う。
※福本佳子代表
現在、限度額を超えた部分は¥1100(移動費用+¥200)でおこなっているが、基本的な考え方は同様。
<支援費・・・障害者自立支援法対応>
※桑山会長
10月の制度化に備えて研修中である。サービスを行うことを前提に障がい者団体と交流・打ち合わせ等をしている
※神谷副事務局長
行う予定で担当者を決めてあり、現在研修中である。
※大西良太理事長
現在検討中
※福本代表
デイサービスでの受け入れは可。現状では考慮していない。
<職員のモチベーションの向上への取組み>
※桑山会長
各種研修会への参加、内部研修会の充実、職制の利用、内部の情報は出来る限り職員には公表する。
※神谷副事務局長
勉強会、研修会への積極的な参加を促し、その情報を職員相互がカバーし合うことで意欲を高める。
※大西理事長
金銭的な報酬では難しいので、コミュニケーションを良くすることと、仕事の確保を重点にしている。
※福本代表
全員の意思疎通を良くして、風通しの良い職場にしておく。
<その他>
新規サービスの小規模多機能型について各団体が夫々関心を持っているようでしたが、報酬単価が厳しいことや現状行っている枠外の「お泊りサービス」と比較しても優位性があまり無いとの見解で、運営上の詳細公表待ちといったところでした。
二日間にわたる長時間のセミナーとなりましたが、講師やパネラーの方々から夫々の立場での貴重な話や意見をいただいた事が、「改定介護報酬単価」による事業所運営の新しい方向の指針の一助となったのは間違いないと思われます。
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