「保育所における「気になる子ども」の現状と課題」というテーマで、鈴木智子さん(埼玉純真女子短期大学専任講師) にレポートしていただいた今回の研究会を、早稲田大学大学院の阿比留久美さんより報告していただきました。
「本郷一夫氏、刑部育子氏を素材に「気になる子」に対するふたつのアプローチ方法をご紹介いただきました。発達心理学では個体能力と関係論の両方を考慮した手法が現在ではとられているものの、発達観が異なるとスタンス・手法はまちまちである、ということで、今回は対照的なふたつの例をあげてくださりました。
本郷氏は、「気になる子」へのアセスメント(発達状態の検査・確認と保育者への聞き取り調査の実施)ののち、「気になる子」の問題行動に対して、?対象児、?他の子ども、?物的環境の調整、?保育者、?保護者の5つの方面からアプローチしていく比較的客観的手法をとられています。一方、刑部氏は子どもを関係性の中でとらえる手法をとられており、「気になる子」本人に対してどのような働きかけをしていくかを自分とのかかわりをもたない他者との関係(THEY的他者)から、特定の他者(保育者)(YOU的他者)との関係にはいってゆき、次第に自分とかかわりを持つ存在として他者をとらえる(最初とは異なるかたちでのTHEY的他者)ものとして描いています。
また保育園外もふくめた子どもの生活全体はどのようにとらえられているのか、という問いに対しては、心理学では全体を一度に捉えることには無理があり、一つひとつの場面を個別にとらえようとする手法が主流であるということでした。
児童館のなかでも「気になる子」が増加しているなか、保育者が具体的にどのような働きかけ・かかわりをしたのか、その結果どのような変化がおきたのかが記述され、子どもの発達の道すじをとらえつつ具体的にどのように行動していけばよいのいかを考えるヒントになることが重要なのではないかという意見が出ました。発達という視点からの報告をいただき、実践のなかで子どもをとらえていくときにどのように発達的視点をもっていくのかを考える端緒となる研究会でした。」
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