著者の淺川澄一さんは日経新聞の記者であるが、今では数少ない「記者らしい」記者で、役人に嫌われているのですが、一般の取材先ではその熱心さに信頼が厚い記者です。
本書は、淺川さんのテーマである「住」と「介護」を追いかけたもので、これだけ丁寧に制度側が用意した住につい徹底的に追跡したのは本書のほかにはありません。その中で厚生労働省や制度のいい加減さを暴くだけではなく、そうした制度上の矛盾を乗り越えながら民間人がいかにたくましく事業をつくりながら生き抜いているのかについても紹介しています。
日本では、老いと住宅問題についての深い関係を分析した研究がきわめて不十分です。これは制度の問題点だけの責任ではありません。企業サイドもそこに大きなマーケットがあるにもかかわらず、検討やチャレンジがされずに旧態依然とした取り組みになっています。ことに老後は2人暮らしから1人暮らしになって死んでいくのですが、この人生上の変化にともなう住宅のあり方について意外に関心が薄いのです。
本書は、こうした中にあって、行政関与型の住宅について総ざらいしたものであり、民間企業の側から新しい事業展開をする際にも参考になることが多いので、企業経営者の方々に一読をすすめたいものです。
- 田中尚輝 さんの日記
- (高齢者福祉)-(その他)
- at 19時08分
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