衰退する産業には特徴があります。
1つは、産業構造や生活スタイルの変化に対応できないことで、これはかつての石炭産業や繊維産業に例をみることができます。
次には、官民癒着の護送船団にのって安心していた産業です。この中には金融産業も含まれますし、認可事業一般が入ります。
その中でいま、NPOと激しくやりあっているタクシー産業を取り上げてみます。この産業は認可事業の1つで、車の台数、運賃、運行規定などすべて国土交通省の認可の範疇にありました。その中で業界は所有する車の台数を増やすことだけを考えていれば、収入増になる時代がありました。ところが、規制緩和によって簡単にタクシー会社の設立ができるようになり、増車もできるようになり、料金についても規制はあるものの幅がでてきました。この途端に護送船団に安穏としていた業界が怪しくなってしまうのです。赤字会社が増え、運転手の中には最低賃金以下の人がでてきました。
このようになるのは、駅前でじっとして客待をする、酒飲み客を追いかけるというような旧態依然としたサービスしかしてこなかったからです。新時代の移動サービスは生活支援・密着型に変身し、子どもの相乗りによる塾の送り迎えや単身高齢者のための買い物サービス、透析患者などのように何回もタクシー利用をする人への割引などを工夫すればよいのです。
ところが認可事業による安易な経営をしてきたために、今度はその認可行政が逆に牙を剥き、タクシー会社に自由な活動をさせない、あるいは新しいチャレンジ意欲を消滅させてしまったのです。
そこにNPOによる白ナンバーによる有償運送の許可(道路運送法の改正)問題がでてきました。タクシー業界の多くが、業界を壊滅させられる恐れがあるとして、NPOの参入に反対をしています。
私はNPO側の当事者として、このような既得利権にこだわるタクシー業界には未来はない、と思います。NPOは障害者などの移動制約者にかぎり、その移動をお手伝いするわけでタクシー業界の敵ではありません。タクシー業界が努力すれば、大きなマーケットがあるわけで、その努力をしていただきたいと思います。そうしなければ、石炭産業の後追いになってしうでしょう。
- 田中尚輝 さんの日記
- (その他)-(その他)
- at 19時03分
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