NPO法人地域創造ネットワーク・ジャパン
常務理事 高橋 均
(中央労働者福祉協議会事務局長)
「結婚資金貸付金制度」「独身税」のことをご存知だろうか。結婚したら1,000円貸してあげる、子供を一人産んだら200円、5人生んだら返さなくてもいい、という制度。もう一方は、30歳過ぎても結婚しない者には税金を重くする税制。いずれも1941年1月に閣議決定された。幸か不幸か戦争で法律にはならなかったが・・・。
あれから67年、産めよ増やせよと期待されて誕生し、戦後の日本経済を支えてきたその子供たちは、いま前期高齢者、間もなく後期高齢者年齢にさしかかる。
そうしたらどうだ、医療費がかさむ75歳以上の医療保険を別枠にする「後期高齢者医療制度」の導入だ。ご丁寧にも保険料は年寄りのわずかな年金から天引き、しかもその保険料は2年ごとに自動的に引き上げられる。
あれほど歓迎されて生まれてきたのに、いまや厄介者扱い、まさに現代版「姥捨て山」以外のなにものでもない。お互い支えあう「痛みの分かち合い」、年配者を敬う日本の伝統を守る「美しい国」の内実は、結局のところ「痛みの押しつけ」と「醜い国」だったというわけだ。
さすがにもう黙ってはいられないと、4/23・24、高齢者自身が国会前に座り込んで撤廃を訴えた姿は、広くテレビでも放映された。広範な国民の怨嗟の声もあり、4/27の山口2区補欠選挙で、この制度の撤廃を訴える民主党候補が圧勝して、先行きに少しは展望が見えてきたけれど、放っておけば、現在の高齢者世代に続く「団塊世代」にはもっと過酷な近未来が待っている。
「団塊党」や「全老連」でも結成して政治にもの申すことはきわめて重要だが、会社人間だった「団塊世代」のご同輩! わが身の生き方を100%政治に委ねるのではなく、政治を相対化する、政治に左右されない「自律的」な生活の領域を少しでもつくる努力をしてみようではないか。
「モーレツ人間成れの果て」の身でいまさら気づくのが遅いと叱られるのを承知の上で、まずは、生活地域のネットワークに加わっていこうと思う。
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