１． 革新的思考の持ち主ゆえに
多くのNPOを生み育て、また見守って来られたお立場から、今現在のNPOが抱える課題や進むべき方向性などについて、本書は明確に書き記されており、全国のNPO団体リーダーの指南書とも言うべき内容かと思います。
現状の社会制度に対する深い造詣と、古今の歴史、文学、思想に関する幅広い見識を土壌にして、自身の体験を交えた文脈や論の構成は、私の知的水準からすれば難解な部分もありますが、洞察すれば共鳴する書でありました。
叱責を受ける事を恐れずに言わせて頂けば、生来持ち合わせていたのか（遺伝子的素養）、田中さんの言われる（可変要素）から生じた思考なのか、大いにアウトロー的発想と逆説的な論であり、ややもすると人間が有している善性の否定本かと受け取りがちでした。
また、青年期に醸成される反体制的な思念を現在も保ち続けている事に、敬意を表すと同時に、月とスッポンほどの知識の差を認めつつも、底流に潜むそのような思考に親近感を覚えたことも事実です。
しかし、田中さんの世間を見る双眼鏡は、その倍率やレンズの精度の違いこそあれ、同方向を覗いておられるのだと一人悦に入っております。

２． NPO団体に対する思いと客観的分析
確かに、人類の有史以来、人が個人から集合体へと組織されると規律が必要となり、規律によって「守る」ものが生じ、いつの間にか規律が「守られる」事に安穏とする者達（守旧派と呼ばれる人たち）の都合の良い道具となり、規律からはみ出す者達を排除しようとしてきた事にも同感です。
田中さんは、多くのNPO団体との係わりから、NPOは本来、規律からはみ出た社会システムや、「守られない」者達の善意の結社であるべきなのに、現状はといえば、擬似社会福祉法人化するNPO団体やそのリーダー達が多く存在する事に、更にそのような方向に自団体の存亡を委ねていこうとする事に警鐘を鳴らしておられます。
私のところにも、年間に数組ほどがNPO設立の相談に訪問してきます。残念な事にその殆どが、介護保険事業開設のための安易な法人格取得が目的であったり、環境や街づくりの団体であっても、初めに助成金ありきの（行政との密約？）NPO設立であったりと、氏の言われる、第３セクターとしての役割や立場を理解しないまま、一種のブームに乗っているだけのリーダー達が殆どなのは悲しい事です。

３． ［人］好み
最近読んだ斉藤茂太さんの本からのフレーズに、「面白真面目に生きる」という文言があり、田中さんの云われる「悪党」に通じているなと感じました。
私の知りえるNPOリーダー達に共通する「真面目」さ・・・故に、常識枠を突破できず堂々巡りの蟻地獄の中で、自分の行動を自己規制していると見抜かれたようです。
どこか、世の中に斜に構えていて、尚且つそれでいてこよなく人が好きで、同様にNPOが好きである田中さんだからこそ、善性を有した悪人たれと仰られているのですね。
結局は「人」を好きになりなさいと。

４． 今後の方向性について
正直私にはわかりません。
悪党になれるのか？そもそも悪党的思考は、得ようと思って得る事が可能なのか？
努力すればなれるものなのか？知識として得たとしても、本質までをも変革できるものなのか？素養とか必然性がない限り、無理な注文なのではないのでしょうか。
どだい、このような本を読んで、初めて気付くような者は、すぐに指摘されているような事など、すぐに忘れてしまいそうじゃありませんか。

５． 最後に
およそ６００〜７００万年前に、チンパンジーの一種から分化され、子孫の繁栄と一族の生命維持のみに営々と生殺与奪を繰り返してきたのが「人類」であり、今もその本質は何ら変わっていないのですよね。
読後、達観したような気になりました。
所詮は、宇宙のなかの小さな奇跡的な環境を与えられた地球という星の、バクテリアや植物、昆虫、魚類や爬虫類のように、地球上に生存する生物の一種が、おろおろと進化のプログラムの過程で、今、社会はこうあるべきだとか、人間性がこうだとかは微々たる問題でしか無く、試行錯誤をしているに過ぎないのではないのでしょうか。
しかし、今を生きなければならない私達だからこそ、懸命になってより良い進化形に向かい、もがき続けていくのでしょうね。
今、知的障害者の就労支援のために、既存事業者への働きかけと就労のためのマニュアル作りを行っています。
また、高齢者や障害者、子供達が常に集える「居場所作り」と、それに関わる団塊世代のリタイヤグループによる「よろず引き受けNPO」を手がけています。
関係団体や事業家・行政などと協働で、数年後には実現できると思って頑張っております。
今後とも、よろしくご指導願います。

＊セルフ・チェックシート結果
B４２ポイント−A３０ポイント＋C５１ポイント＝結果６３ポイントでした・・・
私は「悪党」？