かつては敏腕検事であった人が「ヤメ検」弁護士になり、検事時代に取り締まり対象にしていたヤクザなどの顧問弁護士になるという変わった人生をおくった人物の自伝である。この本の特徴は、本名ですべて書かれていることであり、興味をそそられる。
私が関心を持ったのは、検察という国家権力がどのような構造で動いているのかを垣間見れるところだ。田中は、現首相の父親の阿倍晋太郎が代表をしていた「清和会」の顧問をしていたこともあって、そこでの人脈も分かるようになっている。
団塊世代以上の人であれば、頭のどこかに残っている有名な事件である石橋産業事件、撚糸工事件、平和相互銀行事件、三菱銀行CB事件、苅田町長汚職事件などに検事としてどのように取り組んだのか、ということが続々とでてくる。また、住専で鳴らした大阪の有名な地上げ会社、仕手戦で名をあげた加藤檗△修譴?藥蓋?箸梁雜?ー禺堝?▲ぅ肇泪鷸?錣罵?召糞?蔽罅∀??膺辰盞亳海靴浸蓋?夘廚覆匹?燭?気鹽仂譴垢襦?
いずれの資金の場合にも「政治家」が関連している。そして、それが検挙されるまでいくのかどうなのかは、現場の検事の努力ではなく、闇の「政治権力」が動くのだ。これによって、著者の田中をはじめ、若い検事が歯を噛んで悔しがる場面が何度も登場する。逆にいえば、「事件」にならないようなことも事件にできる力を国家権力と検察は持っているということだ。
ということは、07年7月の参議院選挙では、参議院においては与野党が逆転した。しかし、これを再逆転させることは検察当局にとっては難しいことではないだろう。民主党の国会議員を何人かやり玉にあげれば済むことだ。ぜひとも民主党の国会議員にはぜひともお勧めの本だ。
私たち市民は、国家権力というブラックホールを持つ世界に住んでいるが、これと対抗できる力量をしっかりと養っていかなければならない。それには、権力に引き寄せられない、自立したNPOをつくりあげつつ、自律した「市民」を多数つくりあげていくことなのである。
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