老人福祉法が2005年に改正され、それまでは9人以下の居住者がいる場合には、どのようなサービスをしていても「有料老人ホーム」の対象外にされていたが、たとえ1人でも居住しており、それに介護サービスを提供する、あるいは将来において提供するものは老人ホームの申請を行わなければならなくなった。
この理由は、老人ホームの経営事業体が倒産して「入居金」が保障されないこと、また、虐待や入居者の権利の迫害があったからである。悪徳事業者をしっかりとりしまることはよい。
そして、最近、総務省は各県が有料老人ホームでありながら、申請されていない施設が多いと厚生労働省や各党道府県に周知した。これによって、各県が「宅老所」が有料老人ホームではないか、ということで調査を始めたり、訪問したりしている。
「宅老所」は「有料老人ホーム」ではない
「有料老人ホーム」の規定は、「老人福祉法」第4章の3 第29条によれば、下記のようになっている。
有料老人ホーム(老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、あらかじめ、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。
以上のように「有料老人ホーム」の基本は入居させていることにある。ところが、宅老所は入居ではなく、宅老所へ来た人が親戚や友人の家にいって「お泊り」をしているのであって、入居しているのではない。したがって、自宅は別にあるし、いつでも自宅に帰れるものである。また、有料老人ホームが実施するような「入居金」のようなものはとらないでいる。多くは一泊二食で3000円から5000円程度であり、1人泊まっても宿直をつけるので、収益事業になるような性格のものではない。宅老所の「お泊り」はボランティア精神にもとづく善意がなければ成立しないのである。
厚生労働省は年金などの相次ぐ不祥事をカバーするために、総務省からの依頼について、宅老所を有料老人ホームとして補足するなどということで成績をあげるというような馬鹿馬鹿しいことはやめた方がよい。宅老所という人々が開発したユニークな開発方式が高齢者の生活をいかに助けているかについて知るべきである。
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