私は、この間「子育て広場全国研修会」「チャイルドライン全国研修会」という子ども系の中間支援団体に立て続けに基調講演を担当した。その際の議論から現状のNPOの課題が見えてくる。
まず、両団体とも活発に活動してきており、その量的な発展は目ざましい。子育て広場はこの6〜7年の間に全国に700か所、チャイルドラインは全国に60か所以上の受け皿があり、全国ベースでは年間13万件余のコールを受け、フリーダイアル化に踏み切れる段階まで到達してきている。
だが、いずれもが「当面する」仕事に埋没しており、そこから将来の戦略をどう描くか、社会をどのように変えていくのか、ということについての視点が弱い。これは理解できないわけではない。当面する子どもへの対応とその環境づくり(事務所の確保、職員、ボランティア、研修など)で精一杯なのであろう。
だが、「子育て広場」において親子を迎えてサービスするだけで、あるいは、子どもたちの声を電話を通じて聞くだけで、果たして「子ども問題」が解決するのだろうか?そうではないだろう。
その背景にある制度の改編や新しい市民サービスの創出、また、ネットワークの深まりがなければ、課題の大きさを受け止めるだけになってしまい中途半端な組織と事業で終わってしまうだろう。
多分、日本の多くのNPOはこのレベルに立ち止っているのだと思う。ここから、脱却するには、どうすればよいのか?この具体的な動きを起こしているのが高齢者系NPOであろう。
NPO法人市民福祉団体全国協議会が中心になって、「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」の発足の準備が進められている。これは、介護保険の受給者、その家族、サービス提供事業者、その従事者(労働者)、自治体などを総結集して介護保険制度の立て直しを図ろうというものである。
このような壮大な取り組みがNPOにもできるようになってきている。それは、介護系NPOがNPO法人市民福祉団体全国協議会として約1300団体の結集をしていること、多様な団体との交流を深めていること、介護保険制度と助けあいサービスの重要な担い手にNPOがなっていることなどによって可能になってきた。そして、何よりも、NPOが介護の世界で何をやらなければならないのかという戦略を持っていることが重要である。
10月25日午後5時から「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」(代表呼びか人 樋口恵子ほか)の呼びかけ人会議が東京・四谷の弘済会館で開催される。今後の動向を注視したい。
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