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2009年06月04日

岡村理論を考える(下)

 岡村は自発的な社会福祉の推進者として社会福祉協議会を想定し、その強化・発展に寄与した。
 「社会福祉協議会基本要綱」の第1項はつぎのように規定している。「社会福祉協議会は一定の地域(・・)社会(・・)において、住民が主体となり、社会福祉、保健衛生その他生活の改善向上に関連のある公使関係者の参加、協力を得て、地域の実情に応じ、住民の福祉を増進することを目的とする民間の自主的な組織である。」(昭和37年4月21日、全国社会福祉協議会)
 岡村は、社協の役割を以上のように規定したうえで、その中でも「住民」「個人」に最も大きな力点を置いている。「最も端緒的には住民個人の自己表現の要求であり、さらに相互的な自己表現を通じての相互理解と相互理解の要求となってあらわれるであろうが、その真実の意味は住民の自己決定であることを忘れてはならない。」(『地域福祉論』)つまり、主体的な社会福祉の担い手は個人であり、一人ひとりの人々が自分の決意として他者を支援していくことができるような社会が岡村の目標であった。
 その上に、それだけではとどまらず、主体的社会福祉を進めることが、民主主義の発展を推し進めていくことにつながると想定している。「地域共同体におけるコミュニティづくりは、最初から終わりまで地域の民主化の促進である。しかしこれと並行して地域共同体の欠陥であった地元利害意識を普遍主義的な価値意識すなわち普遍的な人権意識に転換させるための学習活動が必要であるし、また真に住民の共通利害にかかわる物質的要求を実現するための手続きも必要であるが、どんな場合にも情報提供と意志疎通のための地域新聞、ニューズ、住民集会場でもって、住民の主体性を養い育てるような民主主義の訓練を忘れてはならない。」(『地域福祉論』)
以上のような岡村の主張を現実の社会でどのように具体化すればよいのだろうか。岡村の時代には、社協を軸に据える以外にはなかったが、その社協は今では自発的社会福祉の推進者ではなくなっている。実態からいえば、法律による社会福祉の請負をしているにすぎない。この社協の改革は必須事項であろう。また、自治会などの地縁組織についても形骸化が進んでおり、機能をどのように確保するかを真剣に考えなければならないだろう。
 他方において、岡村の時代にはなかった自主的社会福祉の推進者としてNPO法人が生まれてきている。このNPO法人は3万6千を超え、数百万人の人々が活動に参加している。このエネルギーを発展させつつ、既存組織の活性化を図っていくことが新時代の自主的社会福祉を前進させる道だろう。
 だが、NPO法人も法律による社会福祉の下請け事業者になる可能性ももっており、あくまで個々人が自らの内実から発する自主性による思想の確立と実践への参加が求められているのである。岡村の提起した課題は未だ当面の思想的・実践的な課題として存在するのである 。


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