長野県NPOセンターの総会で柏木大阪市立大学大学院教授のお話をお聞きした。柏木教授はアメリカで「日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)」というNPOの代表者を長い間務めていた人であり、アメリカのNPO事情に詳しい。その中で、私が最も驚いたのは、連邦政府のNPOの助成額(比率)である。資料(1980年における推定値)は少し古いのだが、現在ではもう少しNPOへの助成比率が高まっているのではないか、とのことであった。
連邦政府のNPOへの助成
事業分野 対NPO支出総額 NPOの割合
研究 47億$ 54%
ソーシャルサービス 40億$ 52%
文化・芸術 3億$ 50%
健康・医療 248億$ 47%
雇用・職業訓練 33億$ 32%
初等・中等教育 2億$ 2%
高等教育 26億$ 25%
地域開発 18億$ 16%
外国支援 8億$ 11%
合計 404億$ 36%
アメリカ連邦政府は、研究、福祉、文化・芸術、教育、地域開発、外国支援などについては、政府予算の半分近くをNPOを通してのサービスとしているのである。政府は、5兆円近くをNPOにまわし、NPOの仕事のチェックはするが、自らがサービス主体になろうとはしないのである。
これに対して、日本政府と自治体は憲法の規定もあったが、最近まで福祉はすべて行政が担うということであり、一部を民間に任せているといっても社会福祉法人という行政のコピーに委託していただけであった。他の分野も似たりよったりである。
ところが、「介護保険法」以降、指定管理制度や市場化テストなどにより、民間へのサービス主体の移転が進められている。しかし、この移転も行政が実施するときよりもきわめて劣悪な条件で実施している。
こうしたことの背景には、政府の哲学の相違がある。アメリカでは「公益」の実施について市民・NPOに依拠するのが当然であり、この方が効率的であり、自然であるという哲学である。これに対して、日本は「公益」を実施できる能力をもっているのは行政しかない。市民のサービス能力は低く、委託する場合には完全に行政支配下におかなければ安心できない。かつ、市民によるサービスは悪いはずだから委託の条件が劣悪であってよいという哲学である。
私たちNPOは、こういう環境下にあっても1つ1つの成果をあげつつ、政府・自治体の哲学の変化をさせていかなければならない。
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