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2007年06月19日

コムスン問題をどう考えるか?

 以下の意見を、NPO法人地域創造ネットワーク・ジャパンのMMで流しました。

 NPOも介護保険事業に参入しているが、その場でコムスン問題がおこり、多くのNPOにとっても関係ない話ではないだろう。この問題をNPOの立場から、どのように考えるのかを整理してみたい。
 まず、コムスンの今回の不祥事は言い逃れのできるものではなく、介護事業からの撤退は当然のことである。その上で、次の点を考慮しなければならない。
1.介護保険事業に営利企業の参入はよいのか
 介護保険事業は公的なサービスであり、このような場に私企業が参入してよいのだろうか。この答えはイエスである。なぜなら、それ以前の公務員労働による非効率的な措置福祉の提供を継続することを介護保険において断念したことはよい判断であり、企業やNPOが参入できることになったことは評価すべきである。
2.「市場」の特殊性=準市場をどうとらえるか
 ところが、介護保険市場は、通常の「自由な市場」と異なり、「準市場」である。この市場は介護報酬に上限があり、対象になる顧客に限定がある。また、事業の展開においてさまざまな法的な規制がある。つまり、一般の「自由な市場」ではなく、制限のある「準市場」なのである。その支払いが公的な保険と税金によっているのだから当然のことであろう。
 では「自由な市場」と「準市場」の決定的な相違点はどこにあるのか。それは、利潤追求を「自由に」「無制限に」おこなってはならない、ということにある。制度の目的を第一義的にし、経費の確保は当然だが利潤追求を最高の目的にしてはならないのである。ここにコムスンの間違いがあった。
3.事業の画一的な全国展開は正しいのか
 コムスンは、2200事業所を全国的に展開し、業界第二位の位置である。そして、拡大指向が激しく、このことが今回の問題発生の原因にもなっている。果たして、このような方式が正しいのであろうか。
 介護保険サービスは、一人の人間にとって必要なサービスの基本部分を提供するものであり、これ以外に枠外におけるサービスと組み合さなければしっかりとしたサービスにならない。枠外サービスは地域において異なっており(どのようなボランティア団体が地域に存在するのかは千差万別である)、全国の司令塔が1つで要介護者に個別のサービス提供ができるとは考えられない。
 また、賃金報酬が8割前後をしめる事業であり、こうした事業が集積・集中のメリットをだすわけではない。
 したがって、事業の方式としては、地域密着型の展開をすべきなのである。
4.NPOの反省
 NPOは、介護保険事業に進出しているが、訪問介護事業者として事業所のシェアとしては5.4%である。これは、NPOの努力として評価できるが、市場の支配力という観点からみれば、コムスン一社を上回る程度であり、大きな影響力をもっているとはいえない。
 NPO側としては、いまだ、このような状態であること、地域に密着したサービスを全国隅々に提供しているのではない、ということを反省しておかなければならない。
5.危険な傾向
 1)コムスンのサービスがなくなっても、それを受け 入れるサービス体制はできている。
  今回の件では、要介護者の利益を第一義的にすべき であるが、全国的にいえば、サービス提供は十分あ  り、コムスンが撤退してもサービス提供は可能である (特殊な一部地域をのぞく)。この不安を煽り立てる ことにより、地域を無視した資本の論理による事業所 移管論は危険である(コムスンの株は下がるが、名前 をあげた企業の株価は上がっている)。
 2)介護報酬を押さえ、引き下げに利用してはならな  い
  コムスン事件をきっかけに介護保険事業者の多く  が、不正な請求をしているような印象をあたえ、これ によって介護報酬の引き上げをしないという動きは阻 止しなければならない。
  今回の事件の背景には介護報酬が低く、人材が集ま らないということがあることを忘れてはならない。
 3)コムスン労働者の「決起」を期待する
  コムスンで働く人の多くは、まじめな人々である。 その経営者が間違っていただけであって、そこで働く 人々に責任があるのではない。この結果、形態は別に してどこかの企業へ売り渡されるのであるが、ここで 立ち止まって考えてもらいたい。
 コムスンで働く人々よ。じっとして奴隷のように売り 渡し先の決定を待つのではなく、NPOなどの事業所を つくり独立してサービスをすればどうか。
  NPOの私たちは、そうした動きを支えることにやぶ さかではない。地域のNPOに声をかけてもらいたい。


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