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2007年06月27日

NPO戦略の新しい構築

ここのところ、NPOの展開について根本的に考え直さなければならないのではないか、ということにぶち当たる。以下は、そのメモである。ご意見を聞かせてほしい。

1.NPOは「新しい戦略」を持たなければならない
 NPO法が成立・施行されて9年目にはいった。この間、NPO法人として認証されたものは3万1千法人を超え、猛烈なスピードで法人数が増えた。110年もの歴史がある民法34条法人(現・33条法人)が2万6千法人ほどしかないことと比較するときに、この制度が日本の市民のエネルギーに火をつけたことは事実であろう。
 だが、法人数は増えるものの、その内実は心細いものがある。全体の半分が年間予算500万円以下、1000万円以上の法人が約1割でしかないことは、多くのNPO法人それぞれが掲げたミッションを達成できない段階にあることを意味している。ことに本来はNPOを支援するNPOである中間支援団体の混迷は重大な問題であると指摘せざるを得ない。
 ここに表現されているのは、NPOが制度として生まれ、それをものめずらしく活用しはじめた第一段階を終え、NPO本来の社会的な役割を果たしていける存在であるかが問われる第二段階に入ってきたことを意味している。
 こうした段階に対応する新しい戦略をNPOは持たなければならない。

2.NPOの社会的な役割
 NPOは、そもそも何のために存在するのか。それは、行政セクターと産業セクターの対抗勢力として市民セクターを成長させるためである。そのことによって、行政・産業セクターの行き過ぎにブレーキをかけ、市民参画を可能にしていくことである。この行政・産業セクターは長い歴史をもっており、権力と資金を集中し、既得権益をすべて掌握し、社会を自由にコントロールできるようにしている。これに対して市民セクターは、ことに日本においてはまだ明確に組織化されておらず、徒手空拳で戦場に出ているようなものである。
 この市民セクターを実態化していくのがNPOの役割であり、茫漠とした市民のネットワークを進め、社会の一大勢力として形成し、行政や産業に影響力を強めていくようにしていかなければならない。

3.状況の変化
 NPOをめぐる環境も変化してきている。直接的にはNPO法自身の改正問題あり、深く関係すする分野でいえば、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(一般社団・財団法)である。こうした法体系の中でNPOがどこにどのような形で位置するのかについてNPO内部や社会的な合意形成はできていない。この要因は、NPO業界におけるイニシアティブグループが不在だからである。
 また、周辺事情でいえば、指定管理者制度や市場化テストによる行政機能のNPOを含む民間への機能移転がおこなわれる。これも現状でいえば、財政のスリム化の観点からのみの取り組みとなっており、行政職員の報酬の3分の1程度で指定がおこなわれており、ワーキングプアづくりにNPOが寄与していることになっている。
 こうした社会制度の変化に対応できるようにしていかなければ、市民セクターの形成は「夢のまた夢」ということになってしまうであろう。

4.NPOが対峙するもの(危険な傾向)
 日本におけるNPOの危険な傾向は、本来は市民セクターの軸であるべきにもかかわらず、行政セクターの下請け化の傾向に陥っていることである。日本のNPO制度は、市民活動の全身の結果生まれた制度ではなく、阪神・淡路大震災におけるボランティア活動のエネルギーの延長によって偶発的に生まれた。したがって、NPO法人の認証を受けた多くの団体も自立して市民セクターの形成のための一助になるというよりは、「公益活動をするのだから、行政の支援を求める」という志向性が強い。また、事業性のないボランティア団体から、法人化をした場合が多い。
このような現状をみるとNPOには3つの対峙する障害のあることがわかる。
その1つは、行政である。公益法人であるNPOは行政とは近い存在としてみられているが、それはあくまでも対等なパートナーシップの関係でなければ相互の特質を活用した協働はできない。ところが、日本的な特殊性は「お上」である行政がNPOを使うという構造になっており、この問題点を行政もNPOも気づいていない。
2つは、企業である。個々のNPOは会費や寄付、助成金だけで運営できるわけではないので事業収入の確保を目指さなければならない。ここにおいてNPOと企業はきわめて近似な位置にいるということである。ところが、NPOは資本の募集を禁じられており、会費などによる小さな「資本」でスタートするためにきわめて小さな発想による事業展開ということになってしまっている。
この状況を克服するためには、NPOは企業から学ばなければならない、かつ、NPOは企業とその協働を大胆に実施しなければならないということである。
3つは、NPO自身の弱い体質である。NPOは市民セクターを形成・推進していく役割を持たなければならないのであるが、自らが持つ脆弱性によって、この役割を果たせる状況にはない。この現状の克服をどのようにおこなうのかを明確にしていかなければならない。

5.新しいNPOの構築のために
  〜NPO版「松下村塾」を
 NPOが市民セクターの軸になるためには、何が必要か。それは、社会セクターにとっての必須の条件を形成することである。
 社会セクターの条件とは何か。行政セクター、産業セクターをそれぞれ形成しているポイントは、資金と人材確保である。行政の資金は税金・社会保険という強制的に収拾できるシステムをつくり、産業セクターは市場を通じて資金の確保・蓄積をおこなっている。また、人材の確保については権力と資金という人間が魅力を感じるものを背景に集め、また、その教育システムを持っている。
 NPOが市民セクターを形成していこうとするのであれば、この資金力と人材形成能力を持つことである。これについて二正面作戦をとる必要はない。われわれは、何からまず実践するか。それは人材の結集と育成である。NPOの人材育成が他のすべての問題を克服していくことにつながっていく。
 この人材育成は、これまでのようなお座なりのものであってはならない。NPOのリーダーになれる人物を選りすぐり、最低3年間の研修が必要であり、その間の生活保障が必要な場合には、それも用意しなければならない。
 現実の意識あるNPOリーダー、研究者、企業経営者などの有志連合をつくり、現代版の「松下村塾」をつくりあげていくことである。


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