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2007年10月11日

コムスン問題の本質を考える公開討論 PART3〈淺川澄一VS田中尚輝論争〉

【以下の見解を市民協Fax通信に掲載しました】

 私と日経新聞記者の淺川さんとの論争に多くの人が関心をもち、その一部の方からはご意見もいただき、ありがとうございました。今回のコムスン事件は処分をした厚生労働省が思いもつかぬ結果をつくりだしました。それは、介護現場の劣悪な状況が一般に理解されたこと、そして、介護保険の本質についての議論が開始されたことでしょう。
 ところで、浅川さんの主張は、「あらゆる事業活動は儲けるのが当然のこと」「儲けるとは収入と支出の差を生み出すことで、それは、新たな事業活動を起こしサービスの充実のために必要であり」、「介護保険制度では、福祉は税金による措置制度から契約に基づくサービス業に転化したのだから、他の一般サービス業と同様に、顧客満足度を高めるのが目的であり、決して善意の活動にとどまるものではない」ということです。
 そして、淺川さんはいいます。「『事業活動としてのNPO』を浸透させてきた田中さんが、同じ事業者としての企業参入を否定するような論旨に違和感を覚えます。」「田中さんは、『介護保険は、普通の自由な市場ではなく、保険料と税で運営される準市場。その枠内での報酬(給付、売上高)の上限設定があるので、十分な利益を上げられない。だから株式会社はその本来の事業目的にそぐわない。企業価値を高めようというビジネスモデルはありえない』と言われます。」
 さて、浅川さんに反論します。まずは簡単な誤解を解きます。私は、介護保険事業に民間企業が参入するのに反対ではありません。しかし、そのマーケットが一般市場ではなく「準市場」であることを理解して、倫理観をもって参加して欲しい、それができないならば参加をあきらめるべきだ、といいたいのです。
 根本的に淺川さんの見解とことなるのは、現在の資本主義における企業活動のあり方についてです。浅川さんの論は企業一般に「利潤第一主義」という普遍的な原則があって、これがないと企業活動ができないということです。この論にしがみつくと、企業は株主配当を多くし、企業価値の時価総額(株式の時価総額)を引き上げ、それによる資金をつくりだし、M&Aを繰り返して雪だるま式に太っていくというグッドウィルグループやホリエモンが追及したパターンになるのです。
 これに対して、私がいっているのは「ステイクホルダー重視型資本主義」というような概念です。これは、企業活動には多様な利害関係者がいるのであって、「株主」と「一部経営者」だけが勝ち組になうようなことはおかしいということです。その企業の商品やサービスを買う消費者も、そこで働く労働者も、そこに原料を提供する企業も、ある場合には地域社会もすべての利害関係者にとってプラスに作用するように配慮しなければならないということです。
 この観点から介護保険制度をみると、その介護報酬の支払い元は公的な保険であり、税金です。ですから、一般国民がステイクホルダーの一員になっている「準市場」なのであり、その利害も考慮しなければ持続的な制度として定着しないということです。
この準市場へ進出する事業体は、過度な利益を求めてはならないのです。株式会社であるといって何も利潤第一主義にならなくてもよいのです。実際に上場している以外の多くの株式会社は配当をだすにいたっていません。「配当を出さない」(株主になっても儲からない)という企業があってもよいのです。介護保険市場において儲けようとすると、最終的には当事者である要介護者のサービスを落とすか、労働者の労働条件を引き下げるしか手段はないのです。
 ただし、現状のように介護保険事業で働く人が一般の産業よりも低い労働条件で働かなければならないのはもっての外です。これには介護保険制度全体を変えていく中で対処していく必要があります。
 浅川さんがいうように、つぎのような傾向を企業はもっており、そうした企業は介護保険市場からは放逐されなければならないのです。「創業者が猪突猛進して、企業規模の拡大しか眼中にないと、時にこれをないがしろにしがちです。新興企業が陥りやすく、どんな業界にもあります。顧客の性行、需要、市場性、それに従業員の能力、運営力などを創業者が見誤り、過大な成長目標を掲げて、あちこちで摩擦を起こす。不祥事につながる。」
 最後に、NPOは訪問介護事業において約5%程度の市場占有率ですが、できれば逆風が吹く現状を我慢して地域に密着をしながら、できれば10%程度にしていくことでしょう。こうすることによって、介護保険事業への影響力を高め、悪質な事業体の進出を抑える機能も持っていくべきでしょう。


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