田中尚輝 の新着情報

2008年04月22日

NPO中間支援団体の役割(第1回)

以下は、田中尚輝がNPO事業サポートセンター主催の研究会での発表(2007年12月18日)したものの要約である。
2回に分けて掲載する。

【NPO中間支援団体の概念規定】
1.中間支援団体の規定
(日本NPOセンターホームページ掲載条件)
 日本の中間支援団体のなかで最も有名な団体として日本NPOセンターがあります。そこではホームページで中間支援団体を紹介しています。180団体あります。そのホームページに掲載する条件が次に挙げる四つだということで、これが中間支援団体の一つの規定になるかと思います。
(1) NPOの支援の実施
(2) 分野を特定せず(?)
(3) 常設の事務所
(4) 相談にのれる職員がいる
 「(2) 分野を特定せず」はホームページへの掲載条件ということだけなら別にかまわないですが、中間支援団体は個々のNPOを応援すること、社会的な環境整備をすることの二つが大きな課題ですので、これはちょっとおかしいと思いました。
 私は市民協というものを福祉系NPOの中間支援団体のつもりでやってきていますが、介護系NPOということで分野を特定しています。なぜ分野の特定を外すのだろうかと思いましてクエスチョンマークを付けております。

2.現状の中間支援団体論
 紹介するのは、私の手元にあった本で順不同です。
1)『市民社会創造の10年』(編集:日本NPOセ  ンター、ぎょうせい、2007)
 日本NPOセンターでは中間支援団体として10年間を振り返って『市民社会創造の10年』という本を出版しております。これは、本の体裁をなしていない。とても、「市民社会創造10年」とよべるようなものではない。
 例えば前史があるんですが、それが1990年代からで、しかもNPOが成立したきかけを二つしか挙げていません。一つは横浜で2度ほど開かれたネットワーク会議で、もう一つが奈良県の木原勝彬さんのNIRAでの研究報告です。しかしそこにいくまでの底流を分析しないことにはNPOの誕生は語れないと思うんです。
私たちは福祉系ボランティアを1980年台初期からやっていますし、「子ども劇場」は1960年台半ばから活動をしていまして、それらの活動がNPO法をつくるときに大きな力を発揮しましたが、そういう認識はまったく出てきません。
 それから日本の中間支援団体は日本NPOセンターも含めてすべて危機にあって、自らのアイデンティティ確保をどうするのか問われています。それはNPO全体に問われていることとも連動しているのですが、そこについての危機意識をまったく持っていない、不思議な出版物でした。
2)『10年を経て、次の10年を構想する』(市民  フォーラム21、NPOセンター、2007)
 これは本というよりは冊子でして、後房雄さんと加藤哲夫さん、後さんと私、後さんと早瀬昇さんの対談がそれぞれ載っているだけのものです。ですから問題が整理されているわけではありませんし、私は年代や名前などしゃべっていますが裏打ちもありませんので、原資料としての意味があるかなというものです。
3)『NPO白書』(山内直人他編、大阪大学大学院  国際公共政策研究科NPO研究情報センター、  
  2007)
 これは山内先生がまとめられたものです。白書ですから全体を見ていまして、そのなかで中間支援団体についても触れています。中間支援団体の定義としては「自ら事業を遂行するわけではなく、NPOとNPO、あるいは各種の資金提供者とNPOとの仲介の役割を担うNPOである。地域社会やNPOの変化、社会のニーズなどを把握し、人材、資金及び情報と、それらのNPOを結びつける様々なサービスの需要と供給をコーディネートする」と小川さんという方が書いておられます。オーソドックスなまとめ方ですし、これを定義として良いのではないかと思います。
 面白いと思ったのは中間支援団体リーダー像を4タイプに分けたものです。
(1) ファシリテイター=NPO側の主体的な判断や選択を尊重し、それを促進する
(2) ナビゲイター=多様な情報へのアクセスをガイドする
(3) インキュベーター=新しいNPO活動分野を作り出す
(4) コーディネーター=活動領域・分野を超えて様々な情報を個別のニーズに応じて組み合わせて課題解決へ導く
 こういうリーダーシップを持った人材が中間支援団体を担わなければならないということで、リーダー像に中間支援団体の役割をオーバーラップさせてありまして、なかなか面白いと思いました。
4)『NPOと社会をつなぐ−NPOを変える評価とインターメディアリ』(田中弥生、東大出版会)
 田中弥生さんが中間支援団体について論じています。彼女の仮説は「資源提供者と非営利組織との間で資源提供が行われる際に、その阻害要因となっている両者への負荷、すなわちトランザクション・コストを軽減する機能を有する媒介(インターメディアリ)を意図的・計画的に設定することによって、両者間の資源提供を円滑にし、また促進することが可能になる。(トランザクション・コスト=取引コスト)」ということです。
 これについては後で説明します。
5)『NPOジャーナル』(Vol.19、関西国際交流団  体協議会)
 これは、地方の中間支援団体についての短い報告が載っていました。
◎「せんだい・みやぎNPOセンター10周年によせ  て」 加藤哲夫氏
 加藤さんは中間支援団体の課題を次のように設定されていました。
 a) 指定管理、「NPOは公共を担えるか」、セクター全体の課題
指定管理は具体的な制度の一つですが、NPOは公共を担えるかという課題がありまして、それについて中間支援団体がイニシアティブを発揮することが必要であるということです。もっと言えばNPOは公共を担えるはずであって、そういうNPOをつくっていくことが中間支援団体の役割であり、NPOセクター、市民セクター全体の活性化につなげていくという役割があるのではないでしょうか。
b) コミュニティの経営支援、自治体のコミュニティ政 策の支援
 コミュニティのなかで市民活動が活発になり、さまざまなNPOが出来ていくことを支援し、それに対応する自治体のコミュニティ政策を支援する役割が中間支援団体にはあるのではないかということです。
c) 全国対象の支援センターの役割が問われている、政策のNPOシフト
 全国対象の支援センターの役割が問われていて、それは単に政策のNPOシフト、あるいはNPOが社会的にどういう役割を果たすのかという論ではなくて、社会的位置の獲得をやらなければならないということです。
d) NPOセクターの担い手を輩出する仕組み
NPOセクターの担い手を輩出する仕組みを中間支援団体はつくらなくてはなりません。つまり人材の確保です。
e) NPOの信用創造、情報公開
NPOの信用創造、情報公開を中間支援団体はしなければなりません。

このようにきれいに整理されています。

◎「市民フォーラム21・NPOセンター10年を迎えて」 藤岡喜美子氏
 藤岡さんは中間支援団体の戦略について端的に述べていまして、それは加藤さんの論と重なります。
[戦略]
a) NPOセクターの力量形成
 藤岡さんのところでは指定管理制度に積極的でして、そのためのコンサルティングをして、指定管理を取れたNPOからはしっかりとコンサルタント・フィーをもらっています。つまり戦略と事業とがオーバーラップしているわけです。

b) 自治体の再生
 五つか六つの自治体でコンサルティングをやっていて、ここでもしっかりとコンサルティング・フィーをもらっています。中間支援団体の経済的基盤形成も重ねてやっているということです。 指定管理者制度について、ある中間支援団体は非常に消極的です。「NPOはやるべきでない」と言う人さえ幹部?と言われる人の中にいます。

 藤岡さんは中間支援団体の課題としても二つを挙げています。
[課題]
a) 公共の担い手
 指定管理を一生懸命やっていてもNPOのシェア率はたかだか1.8%で、これではどうしょうもないと述べています。
b) リーダー
 力点を置いているのは中間支援団体のリーダーをつくるということで、確かなミッション、強い意志、現実を凝視する力、判断力というようなものを持ったリーダー育成が非常に大きな課題になっていると述べています。


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