田中尚輝 の新着情報

2008年04月22日

NPO中間支援団体の役割(第2回)

2.中間支援団体の機能
 私は実践家ですので、その立場で中間支援団体をどのようにつくっていくのかということです。
1)基本
 まず「中間支援団体の機能」とは何かということですが、これは前述の田中弥生さんの仮説を変形、翻訳してみました。
「変換機としての中間支援団体」と書いていますが、中間支援団体自体が人々に対して直接的にサービスをするわけではなくて、社会的な力をコーディネートして持ってきて、それを増幅させてアウトプットするということです。アウトプットする先は、一つは社会的基盤整備で、もう一つは個別のNPO支援です。
 この変換機の機能を果たすために、インプットするものについては個別NPOではできないこと、ないしはやっても効率性のあまり上がらないことを獲得することが必要です。個別NPOが困っていると言いますか、直接的にできないことは行政や企業との協働です。ことに行政との協働は個別NPOがぶつかってもなかなかできる話ではありませんので、中間支援団体がどうにかしようということです。
 企業についても地場の小さな企業なら個別NPOでも対応できますが、ナショナルなレベルで事業展開している企業との協働は中間支援団体が間に入ることが必要だろうと思います。 
 もう一つはお金で、お金をいろんな形で集めてくる能力を中間支援団体は持たなければいけません。またそれを配分する機能も必要でしょう。
 アウトプットの仕方について、社会的な基盤整備と得体の知れないことを言いましたが、NPO評価が社会的に高まって、活動がスムーズにしやすくなる基盤ですね。一つは税制の問題があると思いますが、ほかにもさまざまなことで基盤整備をする役割が中間支援団体にはあると思います。
 また情報、研修(人材育成)、ネットワーク支援、協働(行政・企業)の推進、コンサルティング、お金の配分などもあると思います。

 以上のことについて、現状の中間支援団体でこのような機能を持っているところは一つもないと言って良いでしょう。
 私は中間支援団体のNPO事業サポートセンターをつくった側で、今も常務理事の一人ですが、その立場で考えると、これらの機能が出来かかっているところと不十分なところがあると思います。
 まずは自分のところをどうしょうかと考えたとき、こういった機能を持つためにはいくつかの弱点が見受けられます。NPO事業サポートセンターで面白いと思うのは、そのような弱点の指摘は素直に受けるし、自らも考えて、何とか克服しようという意欲のあることです。
この基本機能のことで、他の中間支援団体を名のっているセンターとは、食い違ってくるのではないかと思います。
 例えば「公共を担う」ということで、これは必ずしも指定管理を指定してはいないのですが、私、宇都木さんなどのように、指定管理を取ることを通じて公共を担うNPOをどうつくるのかという発想をする考え方があります。ところが別の考え方では「公的なお金を受けて事業をする」側になることは間違いだという考え方をもっています。彼らは民間企業からお金をもらうのは良いが、公的機関からお金をもらうのは良くないと言ったり、行動したりしています。
 つまり中間支援団体の概念規定と機能の整理が理論的、政策的にも必要であるということが一方にあって、そこの整理を一度きちんとしなければなりません。その上でそういう団体をどのようにつくるのかですが、そのときの方法はいくつかあると思います。
 一つはまったく新しくそういうものを創り出すために頑張るというのがありますね。それとも既存の団体があるわけですから、それらのM&Aを通じてやり出す、あるいは連携を通じてやり出すというようなことが具体論では考えなくちゃいけないと思っています。

2)戦略
 中間支援団体が何をしなければならないのかという整理をしてみました。
?@ NPO支援のできる社会づくり(社会的基盤づくりと人材、お金)
 まず社会的基盤づくりが出てきます。これは政府、国家の政策なりシステムの改変が必要だということです。さらに自治体も企業も個人も変えなくてはいけません。個人については、参加はもちろんですが、寄付に対してももっと積極的になってもらいたいということです。
 この辺を全体として戦略的にどのように展開するのかを中間支援団体として考えることが必要です。
?A 人材
 2番目には人材育成が必要です。まずそのとっかかりとしてNPO事業サポートセンターを中心に「NPO塾」をこれから始めます。今は自然発生的に意欲的な人たちがいろいろやっているという構造になっていますが、やはり意識的に人材を作り出す必要があります。そのシステムをどのようにつくればいいのか、これは緊急課題であると思います。
?B お金
 3番目はお金です。これは非常に重要であります。統計を見ると、アメリカとの比較で日本の企業はまあまあの寄付をしていますが、個人の寄付が決定的に少ないです。ここをどうするのか、中間支援団体としては開発したり、実験したりする必要があります。また集まってきたお金を配分したり、集められるソフトを個々のNPOに提供したりということも中間支援団体がやらなくてはいけないでしょう。
3)実行体制
 これは研究会のテーマにはちょっとそぐわないですが、どのようにしてつくっていくかを想定してみました。
?@ 自立した中間支援団体連合
 まず自立した中間支援団体連合をつくることが考えられます。そこにおいて出てくるであろう共通事項についてプロジェクトを組んで推進します。
?A 共通事業
 a)人材育成・研修
  どこの中間支援団体も人材問題で困っています。
 b)公共を担う
  市民が公共を担う観点から協働で展開できることと  して、例えば「指定管理者制度」、「市場化テス   ト」があります。愛知県の市民フォーラム21が県  との協働コンパクトを締結させたことは評価できる  ことだと思います。そういったものを自治体別に重  ねつつ、政府レベルまでいきたいと思います。
  またNPO側の政策提言能力の確保が必要です。N  PO法をつくることと税制問題に関してはシーズが  事務局的役割を果たしていましたが、現状ではNP  O政策というようなベースのことでは、NPO学会  以外には見当たらないです。しかし学会はあくまで  も学会ですので、そこが社会的行動に移るというよ  うなことはないわけです。したがって政策提言能力  の確保とその実現に向けて実行するのは中間支援団  体だと思います。
 そういうことでも前述の中間支援団体連合が必要ではないでしょうか。
c)資金確保
 寄付に関してはいろいろとアイデアはありますが、個人寄付をどうするのかが一番大きな課題です。それと同時に信頼性ある寄付先の設定が必要になってきます。認定NPO法人制度もそれなりに変わっていますが、根本的な変化ではないなか、新公益法人制度の概略が出てきました。ラフに言うと50%以上、公益事業に支出しているところはランクの高い、税制優遇措置のある法人として認めるというもので、08年12月1日から受付が始まります。
 優遇措置のある法人をいくつもつくって、そこにお金をどのように集中させ、また分配するのかということが必要です。
 またそういうことを通じて、ナショナルなレベルと、課題別の中間支援団体と、一定の地域を対象とする中間支援団体の整理をすることも必要ではないかと思います。


田中尚輝 の仲間たちの日記

全員 › 日付順

  • 日付順

指定された記事はありません


譲渡 所得| 医療 業務| 会社 株式| 寄附 益| 事業 宅地| 住宅 借入金| 譲渡 土地| 登記 事業| 特定 寄附| 分割 価額| 分割 適用|